【イベントレポート】2018/02/26 赤坂寺庵 精進料理で和のこころにふれる

概要

開催日時:2018年2月26日(月)

参加人数:15名

於:赤坂寺庵(東京)

仏教の修行僧の簡素な食事として中国から入ってきた精進料理は、長い年月をかけながら、先人の知恵により日本の風土と材料、味付けが工夫されて、現在の精進料理になった。
肉や魚を使わず普段の生活ではなかなか食する機会のない精進料理を、東京・赤坂にある浄土真宗のお寺「常國寺」の仏様の前のお座敷で、精進料理の歴史やお料理の内容等のお話しを聞きながら皆で食事体験。旬の食材を使い、工夫しながら作られる料理の想像以上の美味しさに感動するとともに、食材に向き合い、その季節に耳を傾け、自然とコミュニケーションを行う貴重なひとときを楽しんだ。

 

講師紹介

講師:浅尾昌美さま(常國寺僧侶・食育アドバイザー)

1959年千葉県生まれ。 約30年前に常國寺住職夫人となり、自身も得度を受け僧侶となって寺を陰から支えると共に、栄養士・食育アドバイザーとして寺に隣接する「赤坂寺庵(あかさかてらん)」で精進料理の料理教室を実施。アメリカ・ニューヨークでも定期的に料理教室を開催し、精進料理の認知普及のための活動を続けている。

講演内容

精進料理は仏教の教えに基づいたもの。1200年前に仏教とともに日本に伝来した

・精進料理は、538年に仏教がインドから中国を経て日本に伝えられたのと同時に伝来。日本に於いては仏様に召し上がっていただくためのお供えが起源で、仏様をお守りする役割を担う僧侶によって高度に様式化された。

鎌倉時代に道元によって“食も修行“となり、精進料理の原点となった

・鎌倉時代初期、禅宗曹洞宗の開祖道元が「日常生活のすべてが修行である」と説き「典座(てんぞ)教訓(きょうくん)」と「赴(ふ)粥(しゅく)飯法(はんぽう)」を著した。これには、食事を作る人と食べる人の心得が書かれており、現在、宗派を問わず精進料理の原点となっている。
・「精進」は心身ともに清めて一生懸命に仏道に励むこと。精進修養の一つに精進料理があり作ること、食べることも修行のうちである、とされた。

「不殺生戒」だけでなく、食事を大切にし、生きていることに感謝する心が大切

・仏教の五つの戒めの一つ「不殺生戒」(生きているもの殺してはいけないことから肉や魚は食べないこと)を守ることだけでなく、「命を大切にする心」を持ち、食材をていねいに扱って最大に活かすために、「無駄を省いて、手間をかける」作り方をする。
・そしてみんなで「いただきます」「ごちそうさま」と言って、生きていることに感謝の気持ちを持って食べる。

旬の食材を使い、昆布や野菜の煮汁を出汁として使う

・僧侶が増え自ら農作物を作るようになって、畑や山の旬のものを食材として使うようになった。魚(鰹節や煮干し)を使えないので、出汁は昆布を中心に、あくの少ない野菜やキノコ類の煮汁や、大豆、干し椎茸、切干大根の戻し汁も活用する。
・冬はからだを温める根菜類、夏はからだを冷やすきゅうり等瓜類、なす、トマトなどを多く使う。

器の基本は朱塗の漆器。時代とともに材質を変えて今日に至る

・器は木皿、漆器、陶磁器へと時代とともに材質が変化しているが基本は朱塗の漆器。
お皿やお椀には盛り付ける料理により特別な呼び方があり、「坪」は和えもの、「平椀」は煮もの、「木皿」、「平皿」には焼き物、揚げものを盛りつける。

今後精進料理も変化していくだろうが、“命を大切にする”という精神性を残したい

・これからは外来の素材なども使うようになるなど、精進料理も時代に合わせて変化していくだろう。アメリカ・ニューヨークの教室では、ベジタリアンやマクロビオテックと同じように考えられることもあるが、“命を大切にする料理”という精神性の高いものであることを知ってもらい、後世に残していきたいと思っている。

 

実食




メニュー

<如月 精進料理 献立>


・坪   春菊の白和え(春菊、人参、生椎茸)

・平皿  にんじんのきんぴら(人参、油揚げ)

・平椀  炊き合わせ(高野豆腐、干し椎茸、いんげん、桜の花麩)

・高坏  揚げ大根の蕗みそのせ

・猪口  うどの梅和え

・雀皿  たくわん

・飯椀  飯 魚沼産コシヒカリ

・汁椀  豆腐となめこの味噌汁

*「寺庵」は、浄土真宗 高田派 方廣山常國寺内にあり、精進料理は報恩講の精進弁当を他の寺や檀家のみなさまに供する料理として、開山より作り続けているものが原点となっている。